ゲームの話
Team Fortress 2というゲームがある。
Valveが2007年に公開して以来、11年間絶えずプレイされているファーストパーソンシューティングゲームだ。
最大の特徴は、無料であることとMacでプレイできること。
公開当時はその画期的なアートスタイルとゲームシステムが注目されたが、それも最早過去の話である。似たようなゲームはそれほど腐るほどある。
はっきり言ってしまうと、本作品は斜陽の憂き目にあっていると言わざるを得ない。
プレイ人口はもちろん、Valveによるアップデートの頻度も激減し、「惰性で稼働し続けている」と言っても否定できない有様だ。
日本においては、同種のゲームであるOverwatchやPUBGに完全に取って代わられている。
僕がこのゲームに出会ったのは13歳のころである。
当時、僕が所属していた演劇部には、パソコンオタクのアメリカ人がいた。
(我ながら全くチグハグな文章だなとは思うが、全て事実なのでどうか受け止めていただきたい)
当時、中学では、Minecraftというゲームが死ぬほど流行っていた。
僕と彼も御多分に洩れず、週末ごとにどちらの家でオンラインプレイで遊んだり、実況動画をとってYoutubeに投稿するなど、黒歴史の増産に勤しんでいた。
ある日、彼は......このまま流行りのゲームだけをプレイすることに物足りなさを感じたのだろうが......唐突に、シューティングゲームをやりたいと言い出した。
ただ豆腐状の家を建てるよりも、もっとバイオレンスなモノに手を伸ばしたかったらしい。今思えば、思春期らしい行動であったとも言える。
それでも、いきなりハードでゴアな作品には手が伸びなかったようで、最終的に一つのゲームに落ち着いた。
それがこのゲーム......Team Fortress 2だったのだ。
その頃には我々もPCを使いこなせるようになっていたこともあって、もう狂ったようにプレイした。
彼は、まったくもって、オールラウンダーだった。
どんなジョブでもソツなくこなし、特にスナイパーの腕は一流だった。
「母親にキツく禁止されてるんだ」と言って、火炎放射兵だけは死んでも使わなかったが。
反対に、僕は絵に描いたようなnoobだった。
エイムもガバガバだし、反射神経も悪く学習能力もない。
何度もチョークポイントに突っ込んでは無駄死にとリスポーンを繰り返す、筋金入りのヘタクソだった。
そんな僕は火炎放射兵を好んで使った。
理由は単純。エイムが必要なく、突っ込むだけでもそれなりに戦果を挙げられるからだ。
彼には僕以外にも一緒にゲームをする相手はいただろうし、何もこんなヘタクソと協力プレイする必要もなかったのだろうが、よく僕に付き合ってプレイしてくれた。
それから五年が経った。
今では彼も僕も別々の場所に引っ越し、それぞれの社会の中でどうにか生きている。
僕は今でも、たまにこのゲームをプレイする。
どうにもこうにもムシャクシャして、物に当たらなきゃ気が済まない、という気分になると、ふとこのゲームの存在が頭をよぎるのだ。
で、急いで家に帰って、PCを開いて、ゲームを起動する。
五年前からUIは少しばかり変わったが、やることはほとんど変わっていない。
そこで僕は、五年前からの愛用の装備を引っ張り出し、我を忘れて火炎放射器をブン回すのだ。
敵チームが燃え尽きていくのを見ると、少しばかりの爽快感と共に、なんとも言えない、ノスタルジーに包まれる。
彼もたまに、僕のこのストレス解消に付き合ってくれる。
PCオタクの彼のことだ。今頃は新しいゲームにハマって、こんな過去の遺物はとうに忘れているだろう。
それでも、僕のクソプレイに、嫌な顔一つせず付き合ってくれる。
彼のプレイングの方はというと、だいぶ下手になった。