ファッソンの話
比較的、カッチリした服を好む家庭に生まれたことは自覚している。
物心ついた時からラルフローレンだかなんだかのシャツを着せられていた記憶があるし、写真でもそんな感じのシャツを着ていることが多い。
小学校に上がると反骨精神からか、Tシャツ・パーカー等のラフな服を好んで着るようになった。
「服なんて寒さをしのげればええやんけ!」と思っていた時代である。
高校に進学した頃からファッションセンスの欠落を実感し、どうにかファッショナブルなものを身につけようと努力した。
すると、「カッコいい!」と思う服思う服、全てがカッチリしたセミフォーマル以上のものなのだ。
これにはビビった。あんなに親の趣味に反発しておきながら根底はしっかり洗脳されていたのだ。なんたる情けない反抗期であろうか。
そして今、大学生になった。
無知だった高校生の頃と比べ、いろんなソースを利用してファッソンというものを調べるようになった。
素人がコーディネイトを投稿するアプリをインストールし、自分なりの研究を重ねた。
色々ななお洋服屋さんにも入れるようになった。カメのようなノロさだが、大きな進歩である。
だが、未だに理解できないことが一つだけある。
「シャツの下からロング丈のタンクトップをのぞかせる行為」である。
なんで出てんの???????
死んでもズボンにパンツ以外の衣類を入れたくない人なの???????
俺がしまってあげようか?????ねえ??????
「シャツのボタンを開けて中のTシャツを覗かせる」とかなら、まだわかる。
しかし、「ボタンを閉じた上でその下から白いのが覗いている」のは、やはり僕にはどうも理解できなかった。
ここで投げ出してはいけない、と思って、僕はグーグル先生に教えを請うた。
どうやら、スタイルの面で効果があるらしい。
ズボンの股にあたる部分を隠し、脚を強調することでよりスマートに見えるのだという。
また、シャツとズボンの間にワンカラー入ることで色的なアクセントにもなるのだそうだ。
これには僕も膝を叩いた。
なるほど、合理的理由があってのファッションだったのだ。そう考えると、案外悪いものではないのかもしれない。
やはり食わず嫌いはよくない。あんな感じのタンクトップがあったら僕も買ってみよう・・・。
そう思って、その日は眠りについた。
そしてそれを忘れ去って数週間が過ぎだ頃に、友達と服を買いに行った。
センスがいいと評判で、お洋服の選び方をご教授いただこうと思ったのだ。
彼のよく知っている服屋に入ると、何やら白くて長い布のようなものが目に入った。
近くで見ても到底服には見えない。奇抜なストールかなんかだろうか。
僕は友達に聞いてみることにした。
「これ、どういう服なの?」
「ああ、それね」
彼はことも無げに答えてくれた。
「シャツの下から裾をのぞかせるタイプのタンクトップでね。最近流行ってて・・・」
これ、タンクトップなの!??!?!!?!?
一度わかったと思っていたものが再びわからなくなって、僕は気を失って倒れた。